たゆたう

愛を叫んだり考えたり悩んだり、のあいだでたゆたうように生きている

「嫌い」をことばにすること

誰の言葉だったか、「女性の怒りはポイントカード」という言葉を聞いたことがある。

嫌なことがあってもいちいち言わないのは、気にしていないのではなくポイントを貯めているから。ある日ポイントカードがいっぱいになったら、いかに些細なきっかけであろうとその時点で爆発してしまう。男性はこう、女性はこう、と括るのは好きではないが、この言葉はわりと正しいのではないかと思う。

なぜその話をしたかというと、今回私がこの文章を書いているのもまさにポイントカードがいっぱいになってしまったからである。怒りではなく、悲しみのポイントだけれど。

本題に入る前に述べておきたいが、この文章は特定の個人を批判するためのものでも、読者を啓発するためのものでもない。ただの私個人の意見の表明、というかぼやきである。
とはいえ、内容が内容なので「自分のこと言ってるのかな?」と思う人もいるかもしれない。が、私はあなたを批判したいわけでも、あなたを変えようとしているわけでもなく、いつものように空中に向かってぼそぼそつぶやいているだけだ。もちろん人とのコミュニケーションの中で生まれたもやもやだから私のぼやきたいことに関わる人は何人かいるが、私のために私が気に食わない部分を変えろだなんてとんでもないし、できたらそういう人ともこれからも仲良くやっていきたいから、「そういう人もいるんだなあ」くらいに留めてもらえたらありがたい。すぐに忘れてしまっていいし、読むのが面倒になったらその時点でやめたらいいし、どうしても不愉快なら私のことをミュートなりリムーブなりブロックなりしてくれて構わない。所詮はネットの付き合いだし、あなたにも私にも見たいものだけ見る権利や仲良くしていたい人だけ選ぶ権利がある。

本題に入ろう。

過激な言葉というものがどうにも苦手だ。ポジティブな内容ならまだいいが、ネガティブな内容だと本当に見ているだけでしんどくなってしまう。それが自分の好きなものを否定する内容ならなおさらである。

私はハリー・ポッター(以下ハリポタ)の大ファンだ。Twitterでは同じくハリポタファンの人と楽しく交流させてもらっている。同じものを好きな人と話をすることはやはり最高に楽しい。

が、ハリポタ原作ファンの中には他バージョン、特に邦訳版や映画版を批判する人が少なくない。そしてその批判が断定的な否定の言葉で表現されることもままある。たとえば「クソ」とか。それを見るのがときどきとても苦しくなる。これまでも度々そういうことがあって、その度にポイントが貯まってきていたのだが、先日見かけたとあるツイートでとうとうカードがいっぱいになってしまったので感情を整理するためにこの文章を書いている。

もちろん私だってそれらに問題があることくらいわかっているし、その批判にも一理あると思うことの方が圧倒的に多いのだが、私は原作も邦訳も映画も舞台もテーマパークもすべてほぼ等しく好きなので、心ない言葉で否定されているのを見ると悲しくなってしまうのだ。対象はともかくとして、好きなものを嫌いと言われると悲しい、という感情はごく自然なものとして理解してもらえると思う。

「好き」はいくら声に出してもいいし論理的である必要なんてない。でも「嫌い」を言葉にするときは少し考えを巡らさなければならない。自分が嫌いなものは誰かの好きなものかもしれないのだから。「好き」を共有して盛り上がるのは楽しいが、「嫌い」を共有したところでいいことなんてそうそうない。ほとんどの場合私は直接的に「嫌い」とは口に出さないし、どうしてもそう言いたいときには「否定」ではなくニュートラルな「批判」だと受け取れるよう、なるべく筋道立てて感情的にならないように気を付けて言葉にする。というのが私が言葉を扱う上でのマイルールである。もちろん人間なのでそんなことに気を遣っていられないくらい感情がマイナス方面に揺さぶられることもあるのだが、何かを批判・否定するときこそ冷静に、がモットーだ。

自分の好きなものへの否定批判は絶対に論理的な批判でないと許せない、とかそういうことを言いたいわけではない。なんとなく気に食わないことだってあるだろうし、なにより誰かを納得させたいわけでもないのにいちいちなぜ嫌いかを説明するのは面倒だ。Twitterのように字数に限りのあるツールならなおさらである。

それは十分わかってはいるが、それでも好きなものを嫌いと言われるのはつらい。私がぼやきたいのはそれだけだ。

ここからはただの勝手な願望。

Twitter上のハリポタファンユーザー全員を把握しているわけではないからなんとも言えないが、少なくとも考察界隈では圧倒的に原作派が多い。そういう人が(たとえば)過激な言葉で「映画版嫌い」をつぶやきすぎると、どうしてもそのフォロワーには映画版のネガティブなイメージが刷り込まれてしまうだろうし、もしかしたら映画版嫌いが増えてしまうかもしれない。原作に忠実に見ると批判されるべき点は当然あるし、どんなに素晴らしい作品でも好き嫌いがあるのは当たり前だし、批判をするななんてことはまったく思っていないが、映画版ファンとしてはそうなったら悲しい。

寛容になれ、受け入れろとは言わないが、せめてもっと柔らかい言葉で「嫌い」をつぶやく人が増えたらなあと思う。